はじめに

交通事故による損害賠償では、被害者が事故前から有していた身体的特徴や既往症、心理的傾向が、事故による損害の発生や拡大に影響を与えた場合、賠償金が減額されることがあります。
これを「素因減額」と呼びます。
素因減額の趣旨は、損害賠償の公平性にあります。
損害が事故だけでなく被害者の素因にも一部原因がある場合、加害者にすべての損害を負わせるのは不公平であるため、一定の割合で減額されることがあります。
素因の種類
素因には大きく分けて2種類があります。
心因的素因
被害者の性格や心理的傾向、精神疾患などが損害の拡大に影響する場合です。
- 例:うつ病やPTSD、自己中心的な性格、自己暗示にかかりやすい傾向
- 減額される可能性:軽微な事故にもかかわらず長期間の治療を受けた場合や、他覚症状のない自覚症状が長引く場合
身体的素因
既往症や体質的特徴が損害の拡大に寄与する場合です。
- 例:骨粗しょう症、ヘルニア、脊柱管狭窄症
- 減額の判断:単なる身体的特徴(身長や体重の違い、年齢相応の老化)は原則対象外。
既往症や疾患が事故の損害拡大に直接関与した場合に減額対象となります。
素因減額の立証責任
素因減額を主張する場合、立証責任は加害者側にあります。
加害者は、次の点を示す必要があります。
- 被害者の身体的・精神的特徴が単なる「特徴」ではなく「疾患」といえること
- 損害の発生や拡大にその素因が関与したこと
- 損害分担の公平性の観点から減額が妥当であること
- 減額割合を決定するために考慮した事情の具体性
素因減額を判断する際のポイント
事故の態様や衝撃の強さ
事故の規模や衝撃の大きさは、素因減額の判断に大きく影響します。
大規模な事故や車両損傷が大きい場合、事故自体による損害が明らかに大きく、被害者の素因による影響は小さいと判断されやすくなります。
逆に、軽微な事故で損傷が少ない場合は、被害者の素因が損害の発生や拡大に寄与した可能性が高く、減額が検討される傾向があります。
既往症の種類や程度
素因減額の対象となるかどうかは、被害者の既往症や身体的特徴が事故損害にどの程度影響したかで判断されます。
- 身体的素因
- 骨粗しょう症、ヘルニア、脊柱管狭窄症など、事故の損害拡大に明確に関与した疾患は減額の対象になることがあります。単なる体格や加齢による変化は原則対象外です。
- 心因的素因
- うつ病やPTSDなどの精神疾患、軽微事故にもかかわらず長期通院や休業が必要となった場合は、素因減額が検討されることがあります。
治療期間の妥当性
事故による怪我の程度と治療期間の長さも素因減額の判断材料になります。
事故の規模や症状に比べて治療期間が著しく長引いている場合、素因の影響が損害の拡大に関与したと判断されやすくなります。
通院頻度、リハビリの記録、日常生活への影響なども、事故損害と素因の関連性を評価する際に重要な情報となります。
これらの3つのポイントを総合的に考慮し、
- 事故態様
- 既往症の種類や程度
- 治療内容など
を踏まえて素因減額の有無や割合が判断されます。
素因減額が認められた場合に慰謝料はどうなる?
素因減額が認められた場合の計算は次のように行います。
- 例)損害金額300万円、素因減額2割の場合
- 300万円 × (10割 − 2割) = 240万円
→ 最終的な損害賠償額は240万円となります。
注意点と弁護士の重要性
加害者側の保険会社は、素因減額の主張を強くして支払いを減らそうとする場合があります。
素因減額の判断には医学的知識と法律知識が必要であり、被害者本人だけで対応するのは困難です。
弁護士が関与することで、過剰な素因減額の主張を争うことが可能となりますので、少しでも疑問に思われたらまずは無料相談をご利用ください。
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